仙台地方裁判所 昭和58年(フ)111号 判決 1984年9月03日
申立人(債務者)
川田榮
主文
本件破産申立を却下する
理由
一件記録によれば、債務者は、本件破産申立後当裁判所に何等の連絡もしないまま転居したため、現在申立人への呼出状の送達、その他の連絡が不能な状態となつていることが認められる。
ところで、破産法は、破産手続の円滑、適切な遂行をはかる目的から、破産者に当該破産に関する説明義務を破産管財人らに課し(一五三条)、同義務の履行を担保するため、罰則規定を設けて破産者の居住地を制限し(一四七条)、場合によつては破産者の引致(一四八条)及び監守(一四九条)をも認めている。これらの諸規定に照らせば、自己破産申立事件において、申立人が、たとえ破産宣告前といえども、裁判所に何等の連絡もなく転居しその所在を不明にする行為は、自らが希望する将来の破産手続の円滑、適切な遂行を自らにおいて阻害するものであるから、信義則上当然に制限されているものと解され、申立人が、右信義則上の制限に背き裁判所にその所在を不明にしたような場合には、その申立自体不適法なものとしてこれを却下するのが相当である。
(光前幸一)